綺麗だ
「だめだ……人に会える気配が全くない……」
旅を始めて、一か月半が過ぎようとしていた。もうティーナもログもお互いに対する警戒心はほどけて、『仲間』だと認識することができていた。そのおかげで「その場の空気に合わせた最適解を言う」という所謂、空気を読む、我慢する、などのことがなくなり、だいたいのことを本音でストレートに話せるようになっていた。
今のところ、会えた人間はログだけで人どころか猿にも鳥にも会えていない。
「そう焦んなよ。俺だって二、三年くらい旅してるけど、お前とあいつ以外の人間に会ったことねえ」
「えぇ~」
「それより、道は本当にこっちで合ってんだよな?」
「うん。ほら、今ここ」
「あ゛ー、神奈川の辺りか」
「うん。沖縄の近くまでいったら着くはず」
今の季節はだいたい夏の初めぐらい、のはずなんだが、もう真夏なんじゃないかというほど暑くて、ティーナもログも、水を求めて川を目指していた。暑すぎてミイラにでもなってしまうんじゃないかと本気で思ってしまう。
「あっつい……水飲みたい……」
「それ言わない約束だっただろ」
「ごめん……」
かれこれ川を探し始めてから一週間。なぜか全然見つからず、奇跡的に降った雨で命をつないでいた。そんな二人の間では、「暑い」という言葉は禁句になっていた。
「これ以上進むのはもう危険だ。暑さで死んじまう。どっか、日の当たらない所へ行かないと……」