傷ついたログを見て、ティーナは公園へ走った。それを見てログは、ほっと一息ついた。

(そう、そうだよ、早く逃げろ)

動けないログにアッシュウルフはどんどんと近づいてきて、ログは反撃を諦めた。ただでさえこんなに硬いアッシュウルフの体を、この傷ついた体でどうにかすることなんてできない。

死ぬな、これ。

(クソ……)

アッシュウルフの牙がログに向けられたその時、鋭い銃声と共に、アッシュウルフが地面に倒れた。

「……は?」

「ログ! 大丈夫!?」

公園のほうからティーナがライフルを持って走ってきているのを見て、ログはただひたすらに困惑した。ティーナは逃げたのではなく、ログを助けるために戻ったのだ。

「え、なんで? 逃げたんじゃなかったのかよ」

「あのねぇ、死にそうになってる人を見殺しにできる?」

「……」

「でも、よくログも逃げなかったね」

「あ?」

「だってさ、昨日ログは『メリット』という言葉めっちゃ使うし、あーしがリベドルトの情報持ってなかったら『はぁ』ってため息つくやら、ほかにもいろいろ性格悪いこと言ってたし、ああ、この人ってメリットデメリットしか気にしない合理的な冷たい人なんだ、って思ったんだ。

だからさ、アッシュウルフがこっちに近づいてきても、あーしを置いて逃げるのが一番面倒ごとにも関わらない合理的な策のはずなのに、どうして戦ってたんだろうなーって」

ティーナはずらーっと言った。

「……お前と同じだよ」

ログは目線を逸らした。

「え?」

お前と同じ、その言葉の意味を必死に考えた。そんな時、自分がさっき言った言葉を思い出した。