【前回の記事を読む】まさか私がNG客にされるなんて…毎日何かしらLINEを送ってみるが、前みたいに返信は来なくなった。

Chapter 2

拒絶

自宅マンションの仕事用の部屋で眼鏡をかけた流星が醒めた目でパソコンの画面を眺めている。その画面には、真由子が最近1ヶ月流星の個人掲示板に書き込みした通知がずらりと並んでいた。

真由子が6月初めに掲示板書き込みを告白した後、真由子に不信感を抱いた流星は、知り合いの業者に頼んで、真由子のIPアドレスをチェックし、掲示板に書き込みをするたびに流星のパソコンに通知されるように設定していたのだった。

真由子と出会ってすぐ、流星は真由子に対して特別な親愛の情が湧いたのは嘘偽りではなかった。2人の間には共通の興味や、シンクロニシティしたと思える事も複数確認出来た。

鑑定師からも2人はツインソウルだと言われ、お互いそう素直に信じた。

それなのに真由子は、流星との大切な2人だけの関係をしょっちゅう書き込みしていた。

流星は、真由子に幻滅した。

(俺が思っていた真由子さんとは全然違う……)

幻滅以上に、真由子の書き込みは、人気セラピストである流星の他客への明らかな営業妨害となっていた。流星は、冷静に真由子をNG客に指定する事を決断した。一度醒めた人間は、時として非情だ。

流星はなぜ真由子を突然NG客にしたのか?

サッカーの試合みたいにイエローカードを2枚貰うと退場となるなら分かり易いのだが、パラダイスアロマで流星のNG客と指定されたのは、真由子にとってまさに青天の霹靂、突然落とされた鉄槌であった。

そこまで自分が嫌われたなんて、確かに予約とその取り消しキャンセルの繰り返しをこの数週間してしまったが、それは、LINEに返信をまともにくれなくなった冷たい流星のせいで心が病んでしまったからなのに……。

この時点で真由子は、流星に書かないと約束したイケラブ掲示板へ、まだ流星とのデートや会話のあれこれを書き込み続けている自分自身の行いについて考えが及ぶことがなかった。

手前勝手と言うべきであろう。真由子は書き込みが、半ば習慣のようになってしまっていた。そしてそれを流星が、自宅のパソコンで通知チェックしているなんて想像も出来ない事だったのだ。

NG客となった通知の文章が公式のLINEに届いたら、今後はもう客として流星に会うのは不可能である。だがしかしパラダイスアロマの店の流星の公式のLINEはブロックされたようだが、個人LINEはまだ真由子と繋がっていた。流星の店用のインスタも閲覧可能だ。

(良かった……これで何とか連絡を流星くんと取って、NG客を解いて貰うよう謝ってお願いしなければ……)

真由子は流星にLINEを送った。

『流星くん、なぜ私をNG客にしたの? なぜよ、酷い………』流星から程なくして返信が来た。