「離婚をして、仕事も決まって嬉しいんだけど、社長がしつこく迫ってくるの。寂しいだろうとか、僕も独身だよ、とか気持ち悪いの」

「はぁ~ん、果歩は綺麗だからな。はっきり彼氏がいると言えば」と、僕は、訳の分からないアドバイス。少し腹立たしい。果歩が、

「涼真君、私の彼氏になってくれない?」

「いやいや、僕は妻がいる」

「今日だけ。お願い」

「ダメでしょう」と、急に目が回った。

嬉しいのといけないのとグルグル回る。果歩に手を引かれ、エレベーターへ。どこに行くんだ。ふらふらしている。ホテルの部屋へ入った。果歩が僕の服を脱がしている。

「止めてくれ!」

でも、心では美樹に分からなければいいかなと思っている。でも、僕は美樹以外には勃起しないはず……だけど、

ムラムラする。あれ、勃ちそうだ! 変だな。憧れの果歩だから?

ベッドに倒された。果歩も服を脱いで裸で抱きついてきた。驚いたけど、抱いていいんだと思った。

無我夢中で抱いた。キスをし胸を吸い、愛撫をしたが……違う! 美樹と違う。どうしよう。今更、止められない。酔いが醒めた。

身体の相性は良くない。萎えそうだ。入れる前に萎えた。やっぱり! 美樹以外とはできない!

「ごめん! 君を抱けない! 妻にしか、感じない! 妻は運命の女性なんだ!」

「いいえ、もう一度、抱いてみて!」と言って、僕の手を胸に持っていった。違う、違う、美樹と違う!

「悪いが止めよう! 僕は何をしているんだ。悪いが帰る!」 焦った。着替えて部屋を出た。これは、間違いなく浮気だ。

前回の件がある。二度と悲しい思いはさせないと誓ったはずだ。言い訳ができない。美樹の顔が見れない! どうすれば……いい? 怖い! タクシーで家に向かった。午前一時になっている。