【前回の記事を読む】33歳差の2人。できあがったカップル写真には、残酷なほどハッキリと、親子のような差が…
Chapter 1
運命のツインソウル
その後流星とそれぞれシャワーを浴び、普通の恋人同士のようにベッドで愛し合った。流星の胸に手を置くと真由子は、流星の胸毛の痕跡を感じた。
「流星くん、もしかして少し胸毛生えてたの? 男らしいギャップであった方が良かったのに……脱毛した?」
「うーん、そうだったかも。胸毛なんか嫌でしょ?」
色白でアイドルみたいな流星の胸毛ありは、昭和の女、真由子には萌えポイントだったのだが、令和のイケメンは全身脱毛が主流なのだ。長方形にキレイに整えられた流星の下腹部の形を見ながら、真由子はハイジ男子にしてないだけいいか……と納得するのだった。
予約終了時間の20時に真由子と流星は、夜の渋谷駅でそれぞれ反対方向の山手線に乗り、手を振ってあっさり今日のデートを終了するのだった。
流星と真由子、2人の仲は客とセラピストの立場でありながら、まるで恋人同士のように順調に進んでいた。夜、真由子は2階の自分の部屋で寛いでいる時間に流星に今日の出来事などをLINEすると、程なくして流星から、お疲れ様やおやすみなさいの恋人の絵柄のスタンプが、送られて来るようになっていた。
『この恋人スタンプを使っているのは真由子ちゃんだけです。他のお客様には使ってないですよ』
『えっ、そうなんですか? 嬉し過ぎます』
『本当だよ』
流星の特別扱いを感じて、調子に乗った真由子は、もうひとつ上のお願いをしてみた。
『流星くん、あのね、私のわがままなんだけど、たまに流星くんと短い通話とか出来ないですか? もちろんお店からは禁止されてるんでしょうけど』
『そうですね、お客様とのLINEはいいんですけど……通話は基本的にダメなんですよ』
『そうですよね、会うまでに2週間とか間があるので、LINEだけだと、ちょっと寂しくなってしまって……』
『そうか……真由子さんのリクエストなら、ちょっと考えてみます』
数日後、夜23時半過ぎ、真由子の携帯に突然LINE通話の着信音が鳴り響いた。それは流星からだった。
「あーお疲れ様です……今、パラダイスの仕事が終わって、帰る途中ですよ」流星は、自宅マンションに駅から歩いて帰る途中だった。
「あ、有難う、本当に通話をかけてきてくれると思ってなかったので、めちゃくちゃ嬉しいです……」
「真由子さんだから、本当、特別です」
マンションの部屋に着いてからも、流星はお皿を洗い、宅配便の段ボールをバリバリ破る生活音を聞かせながら、真由子と通話を続けてくれた。しまいにはスピーカーに切り替えて、流星は入浴を始める始末……。
「流星くん、お風呂入ってるの?」
「あー、そうですよ。気持ちいい……」流星の入浴シーンを想像して、色っぽい気分になりながら真由子は通話を続けた。その夜の通話はちょうど30分ピタリ、忙しい流星の負担を考えて、真由子から終了した。
「流星くん、通話有難う。おやすみなさい……」
「こちらこそ真由子ちゃん出てくれて有難う。またね、おやすみ……」
落ち着いた甘い声の流星との会話は、真由子の気持ちを熱くとろけさせるものだった。真由子は夢見心地で眠りについた。