Chapter 2
パンドラの箱
そんな6月上旬のある日の午後、真由子はスマホをいじってパラダイスアロマのホームページを見ていた。その流れで下の欄に何気なく目をやると、そこにはイケラブ掲示板という項目が、数段にわたり表示されていた。
(イケラブ……?って何なんだろ……)
真由子はそのイケラブというモノのページを開いてみた。そこにはホストクラブ、女性用出張ホスト掲示板と書かれており、さらに各項目に目を凝らすと、東京パラダイスアロマ店のタイトルも出てきた。
パラダイスアロマのスレッドを恐る恐る開いてみると、店に所属しているセラピストについて、お客様と思われるヒトからの感想などが、2行ないし3行くらいで書き連ねてあった。
(……こんなモノがあるんだ。店スレってパラダイスアロマの先輩達の評判やいろいろな事が書いてある……へえ……)
池波レイセラピスト……あー知ってる。パラダイスアロマ不動のベテランセラピストさんだ。一度だけ急遽、流星に会いたくて東京に行ったのに予約が取れない時、入ったなぁ……私は池波レイさんには、まったくハマらなかったけど……。
他のセラピストは、宣材パネルでしか知らなかったが、読み進めていくと次々に個人スレが見つかった。
流星の個人スレッドは、流星指名のお客様によって立ち上げられていた。
「大人気のイケメン花川流星くんを応援しましょう!」。デビューから約半年で人気セラピストに成長していた流星を嬉しく思うと同時に、真由子の心はざわめいた。
私の大好きな流星くんは、やっぱり当たり前だけど他にもお客様は複数いて、こんな個人スレを立ち上げられるほど人気なんだ。
じゃあ私みたいに流星くんを本気モードで好きなお客様が、どれくらいいるんだろう? 私以外のお客様との接客も恋人みたいにイチャイチャとかそれ以上してるのかなぁ……興味以上に不安と疑心暗鬼が一気に広がっていた。
次回更新は6月29日(日)、18時の予定です。
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