流星とのLINEも初回だけが公式LINEのやり取りで、すぐ流星の方から個人LINEを交換したいと申し出があった。個人LINEと言えば流星の本名が載っていそうだと真由子は思ったが、流星のLINEのアイコンは記号の☆印だった。
(なーんだ、☆印なんて。やっぱり個人LINEでも本名は、教えたくない……って守りが堅いなぁ、流星くんは……)しかし夜、流星からのLINEには甘々の恋人同士のスタンプが、送られて来たりする。
『恋人スタンプを使うのは、真由子さんだけですよ』
『えっ、本当なの? 嬉しい』
こんなやり取りをするだけで、真由子は流星に特別に思われている恋人みたいな女性、客を超えた存在なのだ……と単純にも思うようになっていった。
ある日、店舗でマッサージ終わりに添い寝しながら、2人はこんな会話をした。
「俺、今世は自分の子供とか要らないかもしれない……養子とか迎えてもいいし……」
「それって私の為じゃないよね? 笑……」
「俺が経営者になったら、一緒に住んで手伝ってくれますか?」
「身の回りの世話? 家事とか? お手伝いさんになるって事ですか? 私、これからどんどん年取るし、いずれお婆ちゃんになっていくよー」
「ただそこにいてくれるだけでいいです。何もしなくても、話が2人で出来たら、それだけで充分なんだ俺は……」
目を瞑ったまま流星はつぶやいた。これが殺し文句というものなのか、こんな事を言われた真由子は、半ば真剣に流星との将来を夢見るのであった。
流星は真由子にこの前引っ越した新宿の部屋のリビングの写真を見せながら言った。
「今度、引っ越しした2LDKのマンションです。リビングのソファやテーブルは、表参道の店で購入しました。北欧の家具で凄く気に入って買いました。MBAで活躍してるあの選手もこの家具メーカーので全部揃えてるらしいです」
スマホの画面には、まるでインテリア雑誌のページのような、生活感の薄いモダンでシックなリビングが、オリーブの観葉植物などと映っていた。真由子はハイセンスな流星の部屋の写真を見せられ、現代の王子のような流星にますます憧れを募らせるばかりであった。
次回更新は6月26日(木)、18時の予定です。
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