「わー、広い!」
ティーナは、あまり都会に来たことがない。だから、田舎娘のような反応をする。だけど、人がいなくなったこの土地はもう都会とはいえない。
はしゃぐティーナを引っ張って、目的地へと進んでいった。多分ここはまだ埼玉あたりだ。ここですでに興奮するって、典型的な田舎娘じゃないか。もしもティーナが文明が栄えている時代に生きていたら、信号待ちの人たちをなにかの列だと勘違いするような子になったんだろう。
日が暮れてきて、荒廃したビルの中に泊まることにした。
「おやすみぃ」
ティーナはいつもすぐに寝てしまう。まだ夕方だというのに、どうしてこんなにも早く眠れるんだ?
気持ち良さそうな寝顔を見ていると、いつもなんとなく撫でたくなる。それと同時に、少しの罪悪感が湧く。ロボットが育ての親だということ、いつかは壊れて、そばにいてあげられなくなること。
『ナギサっ!』
「……あれ?」
ふいに、頬に温かいものがつたった。
「なみ、だ?」
頬をつたった温かいもの、それは『涙』だった。
「なんで、どうして?」
涙は止まることなく、流れ続ける。とりあえず、涙を止めないとと思い、涙をぬぐって泣くのを止めようとする。それでも、止まらない。
「……ゔあ、゛ああぁ……」
ついには、声を出してまで泣き始めてしまった。
(止まれ、止まってよ……)