「……!」

ベランダへ走っていくと、もうすでに宙に浮いて一秒後には落ちそうなティーナをがっしりと掴んで、部屋へ戻した。

「はぁ、はぁ……」

子供から目を離してはいけない。ロボットは一つ学んだ。

「きゃきゃっ!」

「人の気も知らないで……」

ティーナは、ロボットのことなんかつゆ知らず、無邪気に笑っている。だけど不思議と、恨みは湧いてこなかった。

「あのベランダには柵をつけたほうが良さそうだ」

そしてティーナを連れて、マンションのすぐそこにある庭へ洗濯物を干しに行った。ロボットといえど、さすがに服くらい着替える。庭は小さな畑ほどの大きさで、大きな柱が二つ立っているので柱を紐でつないで、そこに洗濯物を干している。

ロボットは、一瞬くらい目を離しても大丈夫だろうと、ティーナから目を離し洗濯物を干していく。そして、一通り干し終わってティーナに目をやると、

「あぅ?」

「嘘でしょ」

ティーナは茂みから出てきたトゲネズミを掴んで食べようとしていた。トゲネズミの棘には、猛毒がある。ロボットはティーナからトゲネズミを取り上げて茂みに帰した。

「あっ……」

「触っちゃダメ」

「うぅ」

ティーナはぷい、と怒っているように目をそらした。

「一瞬も目を離してはいけないなんて……」

そして、ティーナを部屋へ連れて帰るともう夕方になってしまっていた。

次回更新は6月10日(火)、12時の予定です。

 

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