そんな円満とは到底言い難い結婚生活に耐えてきた真由子が、2人の子供達も無事、就職して巣立った今、自分自身の自由をようやく手に入れた。その自由に行動する資金源は、亡くなった父親が遺した預金だった。ある程度、まとまったモノが1人娘の真由子に相続で入ってきたのだ。
真由子は、そのおかげで結婚して以来初めて、いろいろやりたかった事にお金を使っていた。顔のシミ取りレーザー、娘が既にしていた全身の医療脱毛も真似てしてみた。
その他にやりたかった事をぼんやり考えていた時、ふと何年も前に深夜のテレビ番組で、イケメンスタッフだけで女性をアロマエステマッサージするお店が紹介されていたのを思い出して、スマホで検索して探し出したのだった。
(あった、これだ、パラダイスアロマってお店、へえ、まだバリバリやってる……行ってみたい、ぜひ)
となった。
出会い系での遊びも45歳くらいを最後に卒業し、この10年はリアルに生身の男性と触れ合った事は一度もなく過ぎてきた。
仕事先で若い大学生男子の爽やかイケメンに密かに想いを寄せたり、若くてキラキラしたK POPアイドルの活動を追うくらいが、真由子の娯楽であり、異性への興味の精一杯の発散、はけ口だった。そんな中、急に都内のパラダイスアロマに行くという新しい大きな楽しみが出来たのだ。
恋人感覚で触れ合える素敵なイケメンは、真由子にとっては、古い喩えならイケメンがたくさんいる竜宮城、現代風に言うなら刺激的な体験型テーマパーク……といったところだろうか。
ワクワクして入り口をくぐった体験型テーマパークだったが、これから本格的な刺激的な絶叫アトラクションが始まろうとは、この時の真由子に想像出来るはずもなかった。
次回更新は6月20日(金)、18時の予定です。
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