しまいに、私は職場に混乱を招く淫らな女という言われ方をする。
「橋岡さんから誘惑したんでしょ? 男なら勘違いするに決まっている」
「橋岡さんが辞めれば、この職場でこのような問題の原因がなくなる」
私は邪魔者とされた。
「橋岡が辞めれば?」
私の行為を挑発や誘惑と受け取れるということは、本人はさほど孤独ではなかったということだ。勘違いして、この女をモノにしようという精神的な余裕があったということだ。私が勝手に相手を信じすぎてこういう結果になったということだ。
「橋岡が人を信じ過ぎてしまうのは、お前が寂しい人間だという証拠だよ」
しかし、私の気持ちを嘲笑い自分達の立場を保とうとするそいつ等は、本当に孤独になったとき誰も助けてくれないだろう。それはともかく、私はこの職場で秩序を乱す邪魔者となってしまった。
私がいなくなるしかないのである。なんという結末なんだろう。せっかく馴染んだ職場を離れ、仲良くなった仲間と離れることが悲しくて仕方がない。しかし、
「そんなのお前の勝手な都合だろ!」
と、冷たく言われて終わる。
「は? 仲間? お前が信じた仲間とやらの結果がこれだろ? 自分のやったことを正当化して被害者ぶるのもいい加減にしろ!」
とどめを刺された。私は目を閉じて電話を切った。あまりのショックに、それ以来私から笑顔が消えた。お客様の前では無理やり笑顔を作るが、目が死んでいるのが自分でもわかる。
一つ言いたいことがある。そこまで侮辱される筋合いはない。
次回更新は6月23日(月)、20時の予定です。
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