「心配していたのよ。元気そうで良かった」
いやいや、やっとの想いで元気になったのだ。この会社にいる全員は、私が頼る人も無く、一人で部屋にいることを知っている。
ほとぼりが冷めた頃に声をかけるのは簡単だ。人間は元気で健康な時はいいが、体調を崩し、働けない状態になるととてつもない不安に襲われる。自分のそういった経験からも、私は孤独な人間が弱っていたら声をかける。
しかし、その私の行動を挑発とか誘惑と受け取られることがあった。競艇場でのことだ。孤独な高齢の上司が過労と体調不良で弱っている時。
私は励まし、私にできることはするべきだと考えた。しかしその上司は、私の行為を「好意」と受け取り、この女は俺のものだと始まった。元刑事であるその上司は、私に対して尋問を繰り返す。
「お前は俺に付いて来い。わかったか? 俺の言うことを聞け!」
延々と繰り返す。私は断る。
「それはできません」
私がわかりましたと言うまでそれを続ける。あまりにしつこくされるので、仕方なくわかりましたと言う。
「それは、本当か? 本当なんだな!」
それもまた延々と続く。電話に出ないと引っ切り無しにメールが来る。
「お前は嘘つきだ! 返信しろ! 俺の言うことを聞け!」
私は何度も止めてくれと懇願したがその場で謝るだけで一向に止めようとしない。
私は職場の仲間に相談し、しまいには会社のトップにまで話を上げた。ノイローゼになりそうだということを伝えたがわかってもらえなかった。