二つの真実
その2
それから二日後、将棋の大会があるので僕は余裕をもって九時半に家を出た。そして待ち合わせ時間の四十分前の十時二十分にMacに着いた。
「まだ四十分前だから誰も来ていないな」
それからしばらく待った。僕はスマホを持っておらず、時間が分からないので駅の中にある時計を見に行った。時間は十時五十分だった。それからまたMacに戻って待った。しばらくしてもう一度時計を見に行くと、十一時十分だったので焦った。すぐに公衆電話を見つけて電話をかけようとした。しかし公衆電話の使い方が分からず、分かるまでに十分が過ぎた。
「もしもし、今どこ?」
「もしかしてまだ大宮駅にいるの?」
電話の声はなぜか聞き取りづらかった。
「うん。どうすればいい?」
「もう僕たち電車に乗っちゃったから一人で内宿駅まで来て」
電話の声は小さく、駅の名前を聞き間違えた。関係のない駅で降りてしまって困っていたら、将棋大会のお知らせの紙がカバンに入っていることを思い出した。それを見て内宿駅だということが 分かり、電車がいつ来るか調べた。どうやら電車は十分に一本通るらしく、大宮駅から内宿駅まで三十分かかるらしい。計算してみると、大会の受付である十二時ぴったりに着くが、駅から歩いて十分かかるので、もう見学だけでもするために行くことにした。内宿駅に着くと、まず道が分からないので駅員に道を聞いた。
「ああ。それならここから会場まで無料で乗せてくれるバスが十分に一回通るよ。それなら三分で着くんじゃないかな」
駅員がそう言った瞬間にバスが来た。
「ありがとうございました」
そう言ってバスに乗ると時刻は十一時五十七分だった。これは間に合うかもしれない。そう思った矢先である。
「このバスは三分後に発車いたします」
そしてバスが会場に着き、みんなと合流した。受付は遅れたがなんとか間に合ったのでほっとした。大会が始まる前に
「なんでスマホ持たないの?」
と上杉君が聞いてきた。