まえがき
学校を退職後、いくつかの企てを地域で実践する。お宮をはじめ公共施設でさまざまな人と思いつくままアイデアを形にしてあそぶことになった。
自分には奏でたり、筆を持ったり、踊るといった能力が欠けている。一方で、場をあそぶのに必要なアイデアをチームを組んで形づくることは苦手ではない。
結果、地域の多くの方が参加して楽しむいくつかの企てに立ち会った。県や市には後援申請書を、財団には助成申請書を提出する。そこには「企画費・制作費」という項目がない。
場所でひらめいたことをアイデアという形にして、スタッフや観客を集め、公演の準備をする。公演が終われば、さまざまな片付けが待っている。
間髪を容れず来年のために助成申請書を書き始める……。この中で公演以外の作業は「企画や制作」という名にあたるが、その名前が申請書にはない。
ソフトへの対価は考慮されず、今日に至るまで企画や制作をしてきた労力の時間は宙に浮いたままになっている。
「地域創生」が言われ出して長いが、そのためには「アイデア」がいる。アイデアを形にするために集団を作り実施していくまでの「企画力」への配慮が地域に求められている。
10年前の2015年に「NPO法人企画on岡山」を立ち上げる。
拠点として最適な西川アイプラザが見つかり、そこで中規模な2つの企てが始まった。生まれたアイデアが変化していき、同時にその母体となる集団も変容していく。
自分も市民の一人として巻き込まれながら、「ホール」という場に身を置き「企画とはなんであり、地域における制作とはなんであるのか」を考える日々が続いた。
10年前に立ち上がった2つのアイデアは形となって今も続いている。
一つは、子どもの音楽劇「野良のあそび箱in夏休み」── 子どもが本来持っているエネルギー(身体、笑顔、歌声)がいかんなく発揮され、そのエネルギーが大人たちを次々に巻き込んでいく企てである。地域にホールがあるにもかかわらず、相変わらず単発のおあそびイベントや習い事の類が多い。それらとは一線を画した企てである。
もう一つは、舞台芸術祭。地元のさまざまな人が集まってくる「ニシガワ図鑑」は、参加チーム代表者も実行委員会の委員となり、美術家や照明家を巻き込んで実験的な作品を創り続ける企てである。