そうです。今夜は子ガエルの歌の発表会だったのです。雨の降っている暗い夜の森に子ガエルの歌が響いています。

森の中に土がこんもりとした所があって、横穴に沢山のキノコさんが生えていました。普段は真っ暗なのですが、雨が降っているひときわ暗いときは、ぼぉっと明かりが灯ります。誰も来るものがいないので、安心して明かりを灯せるのです。

やがてキノコさんは互いに帽子を取って、挨拶を交わしてから話を始めます。話題は限られています。面白い話以外してはならないのです。

誰が一番面白い話をするかで序列が決まります。そこでの王様は、一番面白い話をしたキノコです。雨の降っている暗い森の横穴で夜通し笑い声が聞こえます。

こんな夜の森に、カエルさん以外誰も出ていないと思ったら、他にも出ているものがいました。それは森の近くでその年死んだこどもたちでした。

こどもたちは死ぬとしばらくの間、近くの森にとどまって、雨の夜の森の中だけに姿を現すことが出来るのです。そして皆でボール蹴りをします。

女の子はボールを持って走ることも出来ます。こどもたちは皆大声を出し、元気いっぱいに駆け回ります。

こどもたちがいくら大声を出しても、人に声が聞こえることはありません。人に聞こえたとしても、それはヒュウヒュウ、ビュウビュウと鳴る風の音にしか聞こえないのです。

小さい皆さん、皆さんは雨の降っている暗い夜の森に行くことはありませんけれど、でもときどきは目をつぶって想像してあげて下さい。

 

👉『小さい皆さん、こんにちは』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】「今日で最後にしましょ」不倫相手と別れた十か月後、二人目の子供が生まれた…。W不倫の夫婦の秘密にまみれた家族関係とは

【注目記事】流産を繰り返し、42歳、不妊治療の末ようやく授かった第二子。発達の異常はない。だが、直感で「この子は何か違う」と…