「174番、起きたか。布団をたたんでなおせ。もう少ししたら昼食だ」

「174番」これが、俺に与えられた新しい名だ。とたんに首筋にヒリヒリとした、嫌な感覚が走った。そして実感した。

そうだ俺は、捕まったのだ。逮捕されたのだ。

昨日の夜10時ごろに逮捕されるまで、初夏の夜をさまよったので、汗でベタベタだ。風呂に入りたいと思った。

今日は火曜日。本来なら、一般企業で働く会社員として、普通に出勤している時刻だ。だがここは留置場。会社に電話もできない状態。

スマホ、現金、洋服、荷物、身につけていたものは、一つ残らず、入所直前に預けた。外部への連絡は、弁護士が来てから初めて可能になる。万事休すだ。

 

👉『マリファナ家族』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】マッチングアプリで出会った男性と夜の11時に待ち合わせ。渡された紙コップを一気に飲み干してしまったところ、記憶がなくなり…

【注目記事】服も体も、真っ黒こげで病院に運ばれた私。「あれが奥さんです」と告げられた夫は、私が誰なのか判断がつかなかった