「174番、起きたか。布団をたたんでなおせ。もう少ししたら昼食だ」
「174番」これが、俺に与えられた新しい名だ。とたんに首筋にヒリヒリとした、嫌な感覚が走った。そして実感した。
そうだ俺は、捕まったのだ。逮捕されたのだ。
昨日の夜10時ごろに逮捕されるまで、初夏の夜をさまよったので、汗でベタベタだ。風呂に入りたいと思った。
今日は火曜日。本来なら、一般企業で働く会社員として、普通に出勤している時刻だ。だがここは留置場。会社に電話もできない状態。
スマホ、現金、洋服、荷物、身につけていたものは、一つ残らず、入所直前に預けた。外部への連絡は、弁護士が来てから初めて可能になる。万事休すだ。
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