「お母さん、ホテル着いたよ。おやすみ」

『待って! お土産を渡し忘れたの。明日、ホテル何時頃出るの?』

「十一時にホテル出ると思う」

『分かった。十時半頃までには、ホテルに行くね』

「ええ、わざわざいいよ」

『顔を見に行くね』

「分かった。待っているね」

『じゃ、おやすみ』

朝、お父さん達が来た。いっぱい抱えてきた。

「こんなたくさん要らないよ」

「美樹、何言っているんだ。嬉しいです。全部持って帰ります」

「多すぎたかな。美樹が好きな柿餅も入れているからね」

「うん、ありがとう」

親は無限の愛をくれる人だ。涼真さん、嬉しそうに抱えている。

「ごめんね。多いよね」

「いいや、美樹への愛情の大きさだよ。嬉しいね」

「うん、ありがとう」

新幹線の中、駅弁買ったので楽しみだ。二人で仲良く食べておしゃべりした。少し、眠そう……疲れただろうな。

「ねぇ、涼真さん」

「うん、何?」

気持ち良さそうにウトウトしている。

「私、仕事辞めてもいい?」

ぱっと起きて、

「辞めてくれるの?」

「辞めて家にいてもいいの?」

「わぉー、いつも帰ったら美樹が待っていると思うだけで嬉しい!」

強く、抱きしめている。

「涼真さん、新幹線の中」

「そうだった。アハハハハ」

とても、喜んでいる。私に気を使って、言わない涼真さん。決めた。三月までに辞めよう。

次回更新は6月2日(月)、21時の予定です。

 

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