「は、はじめ、ま、ましてビ・リバー印刷の柳澤で……ご……ざいます」

やはりそうだ。涼真君、顔を上げた。

「ん! ビ・リバー印刷?」

涼真君もびっくりしている。

「きょ、今日はお時間頂き、あ、ありがとうございます。早速ですが提案書と見積もりを準備してきました」

ドキドキしている。

「分かった。見積りを詳しく確認したいから山川秘書、山下さんを必要な部署へ案内して、僕は、柳澤さんから、詳しく聞くから、ゆっくりでいいよ」

「はい、分かりました。少し時間がかかりますが、案内いたします」

部屋を出た。部屋のドア前に、外出中の札を。涼真君が鍵をかける。

「ふ~ん、ビ・リバー印刷の柳澤さんですか~」

「ひ、久しぶりね。本部長とはびっくり」

おどおどと言った。

「おおー、久しぶりだな。度胸があるね~。僕をこんなに振り回して、焦らして苦しめるのは君ぐらいだよ。僕から逃げるのは」

「あら、随分上から目線ね」

隣に来た。スーツのブラウスのボタンを外している。

「えっ? 何しているの!」

「僕の胸に印をつけるんだよ。もうこの前の印はとっくに消えているだろうから。う~ん、いい匂いだ」

胸を出して、吸ってキスマークを付けている。

「誰か来たら、どうするのよ。止めてよ!」

「ダメだ。首に付けるかな~」

「ええっ? ダメよ!」

「う~ん、いい香りだ。僕の物だよ。今日の夕方、会社の正面に車で待っているからね」

「はぁ~! 何で! 会社の前に?」

「逃げないように」

腰が砕けそう。

 

次回更新は5月30日(金)、21時の予定です。 

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