【前回の記事を読む】どうして来ないんだ! 愛しているのに! 待てど待てど美樹は来ない。会いたくて仕方がない、あんなに幸せだったのにどうして…
第二章 年下の男性に心が揺らぐ……
【高山 涼真編】
ん! 美樹の声? 振り返ったら、
あっ! 美樹だ!
カウンター席を見たら、男女が肩を並べて、座っていた。男性が美樹の肩に手を回している。我慢できず、「悪いが、急用ができた。またな」と席を立った。
男性の手をほどいた。
「僕の女を触らないでもらいたい!」
「えっ!」と驚いている。
美樹が振り向いた。
「ええっ? 涼真君!」
相手の男性に、
「すみませんが、美樹を連れて帰ります。失礼します。美樹、行くよ!」
誰なんだ! 美樹に触る男は! ぶっ飛ばしたい奴だ! 美樹は慌てている。
「秀、ごめん! 由美によろしく。この埋め合わせは、今度ね……」
言い終わらないうちに店を出た。
自分でも分かるぐらい顔が怖いだろう。美樹が、
「手が痛い!」
それでもゆるめなかった。腹が立つ。タクシーに乗ってホテルに着いた。カウンターでカードキーを受け取ってエレベーターへ。
一言も口を利かない。美樹が、
「ねぇ、手が痛いの」
「……」
無言。
部屋に着いた。
「そこに座って」
深呼吸して気持ちを抑えて聞いた。
「さっきの男は誰なんだ!」
「会社の仲のいい同僚だよ。大阪から出張で来ているの」
納得いかないが、それは置いといて、
「僕を避ける理由を言って!」
「……避けてはないよ」
「じゃ、何!」
「……忙しかったの」
「理由にならない!」
「……」
「僕はこの三か月、美樹に会えないのが苦しかった。分かっている?」