俳句・短歌 句集 母娘 2020.08.31 句集「地雷の如く」より三句 地雷の如く 【第9回】 馬場 美那子 母ひとり、娘ひとり、恋たくさん。 「おひとりさま」とその母の13年を綴るドラマティック川柳句集。 自由奔放にたくさんの恋をしてきた「おひとりさま」な娘。たったひとりの肉親である母は、夫に先立たれて長かった。 ほかに身寄りのない二人なのに、喧嘩して、諦めて、また喧嘩して。恋はすれども、母は捨てられぬ。母への情愛と異性への恋心との狭間で揺れる心情が、おかしみと哀しみを込めながら五七五の17音字に込められた「絆」の物語。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 願掛けの瞬間の魔に惑うのよ 右左どちらへも向くねじり花 狂乱の心へ慈悲の手と手と手
小説 『迷いながら揺れ動く女のこころ』 【最終回】 松村 勝正 主人は下半身麻痺で、車いすの生活です。障害を承知で結婚しました。でも、私は何もしません。入浴介助からリハビリまで… 「そうよ、山形さんも注意遊ばせ。二人で篠田、山形と苗字で呼び合うのはいかにも他人行儀ね。これからはお友達になったのだから、下の名前で呼びましょうよ。私は『陽子』。山形さんは?」「私は『美代子』と言います」「素敵な名前ね。美代子さんは青葉台でしたわね? 長いんですか?」「まだ二年程です」「お子さんは?」「いません。主人と二人きりです」「ご主人のお仕事、伺ってもいいかしら?」「主人は在宅で個人事務所…
小説 『浜椿の咲く町[人気連載ピックアップ]』 【第33回】 行久 彬 子供の悲鳴が聞こえるという妙な噂――夏に一人だけ首回りの伸びた長袖のトレーナーか長袖のシャツを着ていて… それから一年ほどが経ち、美紀は小学四年生になった。六月になり学校も衣替えの時期を迎えた。しかし、級友たちが半袖に着替えても幹也は一人首回りの伸びた長袖のトレーナーか長袖のシャツで袖口だけを少し捲って着ていた。そんな中、幹也の近所や友だちの間で妙な噂が流れ出した。幹也の家から子供の悲鳴が聞こえるというものだった。噂は学校にも届き、幹也一人が衣替えの時期になっても腕を覆う長袖を着ていることを訝った担…