「ち、ち、違いますよ! あなた……いや、お名前を教えてください」
やっと、聞ける。
「美樹と言います。よろしくね。ウフフフ」
いい名前だ。何がいい名前なんだか意味が分からないが響きがいい! 何の響きだ! 意味不明。
何度か話しているうちに、どんどん好きになっていくのが分かった。僕をどう思っているのかな。気持ちが抑えられない。美樹さんの仕草や、目が無意識のうちにグラスに伸びる手の動きを追っている。綺麗だ。
ある日の金曜日勇気を出して、
「美樹さん、僕と付き合ってもらえますか!」
「あら、どこかへ行くの?」
何と、天然。
「ち、違いますよ。恋人としてですよ!」
「ねぇ、涼真君、おいくつ?」
「四十歳です」
「私は来年、五十歳よ。分かる?十歳も年上だよ」
「それがいいんです」
「あなたが五十歳になったら、私は六十歳だよ」
「当たり前です」
年上が気になるようだな。