納得のいかないままで終わることだけは自分に許せないと思う方もいれば、やれやれ終わりかと満足とも不満足とも思いを巡らしながら「まあ良い方だった」と特にあるわけでもない基準というか、他人と比較して自分自身に言い聞かせて終わりを迎える方が多いようです。

家族を養い自分の業績を残し「立つ鳥跡を濁さず」の日本人の文化的気質を守りながら、自分で自分の人生を褒めて安心してこの世を去れる知的才能を最後まで保っていく優秀な方もたくさんおられます。

この本では、死ぬまで天職として1つの仕事を終える人のことは考えないことにします。

これらの人は死ぬまで安定した精神で楽しい普通の満足を味わい続けることが出来る人で、感動的な満足や未知への挑戦的満足を選ばない方々でして、一般人と比べて土着民族的思考が強く良くも悪くも動かず、現状変化を求めない選ばれた方ということが出来る方たちなのです。

大部分の大衆は60歳頃を境に新たな人生の大変革で大海原に出発しなくてはなりません。金持ちでも貧乏人でも半強制的に組織制度社会から放り出され、新たなシステムに入るように強要されます。人生の終局、断崖絶壁の先にあるゴールには閻魔大王様がお待ちになっていてくれます。

もちろん60年以上も生きてきたのですから知識経験、社会の常識や社会の仕組みは身に付き、新たな出発の準備は万全であるはずですから、怖いものは何もないのが当たり前なのですが、不器用さと積もり積もった過去のしがらみ的経験が邪魔になったり、そして身体機能や体力の衰えも問題になり、閻魔大王様に拝謁する最後の航海に不器用に櫂(かい)を取ることになります。

エンジン全開で出発する者もいれば、乗る船すら見つからずウロウロする者、船に乗ったは良いが船もろとも打ち寄せる波に翻弄されてオロオロとただ漂う者、もしこの最終レースの見学者が高みから見ているなら面白いでしょうね。