八 核家族化がもたらしたもの
M 何せ、これから話す四つ目の理由は、おいらの考えとして最も重要なことであるだけによく聞いていてくださいよ。
それはね、世の中が変わったからと世間の人たちは一言で片付けてしまっているが、おいらから言わせてもらうと、家族間における人としての〝道徳観〟というか、〝倫理観〟というべきなのか、これらの考えが特に親子の間で薄れてしまったように感じるんだよ。そうは思わんかね。
W 何!! その親子の間での〝道徳観〟とか〝倫理観〟とは、一体どういうことを言っているのか難しくてわからんね。
M そうか、難しいかね。ごく簡単に言うとね、子どもは親の面倒を一生家庭で見る、という昔の考え方を〝道徳観〟とか〝倫理観〟に置き換えてのことであるが、このような家庭で一生面倒を見る風習が今ではなくなってしまったように痛切に感じているんだよ。
そこにはね、昔からの家族制度というものが大きく変化し〝核家族化〟が今の社会では一般的になってしまったわけだが、その結果親子の関係はどうなったと思う。
W 確かに、協力し合いながらの一体化の様子はあまり見られなくなって、逆に親子がバラバラという感じだね。
M あんたもやはりそう思うかね。実際、親子は別々の生活になってしまい、親の方は老夫婦だけか、もしくは一人ぼっちの寂しい日常生活を送っているんだよな。
しかもだ、この状況だけなら親の方も仕方なくあきらめの境地にあるかもしれんけどね、そのうちには、長く住み慣れた地域とわが家を捨てて老人施設へと間違いなく追いやられてしまうのが現世であって、とても悲しい現実が待っているんだよなー。
W そりゃ悲しいことだよねー。その原因は、やはり〝核家族化〟にあるということになるんだろうね。
M その通りで、全て原因はそこにあると思うよ。だから、親のありがたみや尊敬の念など一切感じられない現代っ子の姿に対して「一体誰に育てられて、一人前の人間になれたと思っているんだ」とイヤミの一つでも言いたくなるような親たちの心境ではないかと思うよ。
さらに親たちから言わせれば、若夫婦は何の不満があって、年老いた親の面倒を見ることもせず独立してしまい、家のローン返済に明け暮れなければならないのか、についても理解に苦しんでいるんではないだろうかなー。
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