【前回の記事を読む】説明不足で私と患者とその家族との間にできてしまった壁。そして未曾有のコロナウイルスによってさらなる壁が迫っていた。
一、壁
新型コロナによる分断の世界
政府は新型コロナ発生直後、コロナ対策本部を立ち上げた。本部から様々な情報が発せられ、日本国民はその情報の共有ができた。対策本部をリードしたのは、尾身茂氏である。
彼は、自治医大出身で公衆衛生学を学び、その分野で活躍、世界保健機関(WHO)の西太平洋地域事務局長になり、そこでも活躍した。優れた業績として、急性灰白髄炎(ポリオ)の根絶のプロジェクトを指揮し、根絶させた。
日本人の全員がそのウィルスへの免疫を獲得しているということだが、現在でも混合ワクチンの中に含まれている。過去に、根絶したと考えられていたウィルス感染症が、思わぬ時に出てきたことを考慮すれば、賢明な対策である。
この尾身氏がリードされたのである。対策の多くを尾身氏にゆだねた。コロナ感染者数の減少、収束を見越して、政府は令和5年4月27日、対策本部の基本的対処方針の廃止を決め、同時に対策本部を廃止した。
それに従って社会生活では、コロナへの壁を取り除く方向にあるが、国民は依然として、警戒を緩めることなく3密を維持し食堂などでは、客との間の透明な壁を除去していない。病院では外来患者に対して入り口で、サーモグラフィーによる体温測定を続けている。
今までと変わりない。電車内、道を歩く人もマスク無しの人は少数である。政府の方針に納得していない、自衛の対策である。
問題として解明されていないのはウィルスの発生源である。スペイン風邪は、初めはアメリカのカンザス州に起源があると言われた。当時1917年の戦争で、徴兵制度が敷かれ、全米の田舎から、若者が訓練所に集められた。ここがウィルス感染を広げる環境を作ったというのである。
ウィルスに感染した若者がヨーロッパの戦争に派遣され、ウィルスはヨーロッパへひろがった。一方で、中国説は、英国とフランスの後方支援で96、000人の中国人労働者が動員されて、パンデミックとなったというのである。
スペインでは3回のパンデミックがあった。多くの患者が発生したものの、発生源ではなかった。当時の情報統制で各国は殆ど報道しない中、中立国であったスペインだけが患者の発生を報道したので、スペイン風邪と名付けられたのである。スペインとすれば大迷惑である。
本来のウィルスの起源はどこにあるのだろうか。インフルエンザの親戚である。ウィルスは動物起源が多い。スペイン風邪では、豚、鶏、アヒル、ガチョウなどが取り上げられた。しかしまだ特定されていない。
新型コロナは電子顕微鏡での検査ができる。ウィルスは一本鎖RNAを持っていることが分かっている。これは変異しやすく、多くの亜型があることが分かった。ウィルスの検出法も進歩した。