美代子が

「そうですよ、一人旅でも現地で友達も出来ますよ。私も今回の旅で旅行に参加した中にお一人さんもいましたから、すぐに友達になれますよ」

悠真が

「心配なんかいらないよ。それより先ほど美代子がおこげの話をしていた、パエリアを食べてみたいね、美代子作れるでしょう?」

と難題を振ってきた。美代子は自信がなかったが、少し間をとってから

「まだ、今ならアンダルシアで見た大きなフライパンを思い出しながら、頭の中でレシピを組み立ててみるわ。あのおこげの具合が大事だから、そして熱せられたオリーブオイルの香りを思い出してみる」

「楽しみだなあ、美月に具材の買い出しを頼めばいいよ」

「美月さん、買い出しに自由が丘の市場へ一緒に行きましょうよ」

「美代子さんがご一緒だと力強いです」

美月は、これまで台所のことは一切、自分一人で仕切って来たので、美代子と買い物に出かけるのは初めてで、嬉しくもあり、一方で自分の領域を侵食されることに一抹の不安もあった。

「それでは美代子さんの都合の良い日に声を掛けてください」

「分かりました」

美代子は、パエリア作りを承諾したが、本当にスペインで食べたようなおこげたっぷりな美味しい料理が出来るのか不安だった。これまでも独身時代から食事の支度は母がやってくれていて、自分はただの食べる人だったから。でも、外食などで美味しい料理は食べてきたので味覚には自信があった。

自室に戻りパソコンでパエリアのレシピを検索してみた。料理サイトにはたくさんのレシピが列挙してあり、アンダルシア地方のパエリアに絞り込んで、あの日のレシピに近いと思われる項目に目が留まった。早速、ポイントをメモ用紙に書きとめた。ふと時計を見ると一時間も検索に没頭していた。

次回更新は4月12日(土)、22時の予定です。

 

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