【前回の記事を読む】大きな瞳と艶やかな長い黒髪にやや豊満なボディ。自分にはないものを明らかに感じてしまい…

第1話 天空の苺

智子はピザを注視した。チーズとメニューにあるがナチュラルチーズでないのは明らかで、原材料は乳製品ではないと思った。

智子はソーセージを口にしたが、子供の時に食べていたものとは味や食感が違うと気づいた。粗挽きとメニューにあるのに肉質は均一で獣脂感は全くない。本物の豚肉ではないのだろう。

みんなは着色料で染まった無果汁のシロップをソーダで割ってアルコールを加えたサワードリンクを飲んでいた。智子には理解できないが、場を尊重して口にはしなかった。

「なんか料理、追加しよ」

誰かが言った。

「今日はさ、孝太さんと智子さんが好きなもの選んで。ずっと空にいたんでしょ」

「別にいいよ」

「選んでよ。どうせ割り勘だし」

「あっそう、じゃ」孝太はメニューディスプレイのタブレットを智子に渡した。

「俺、ちょっとトイレに行ってくるから選んでおいて」

智子は、入念にメニューを見て選んでいた。明らかに人工的なものはもちろん、表示はないが、成長ホルモンや抗生物質が使われていそうな食材を使ったものは外して考えた。

智子は、蔵元が表示されたクラフトビールと木の子のローストを選んだ。

孝太がトイレに行くと言って席を立ったのとほぼ同時にミナも席を立った。誰もそれを気にしない。

しかし智子は少し気になった。智子は自分もトイレを装い見に行こうかと思ったが、さすがに憚(はばか)られた。孝太にしては時間が長いと感じて、何か嫌な感じがした。しばらくして孝太が見えた。