まえがき
これは、地方公務員の心理職として27年間勤めた私が、これまで対応してきた相談をもとに、事例と解決方法をまとめた一冊です。
心理職という言葉に馴染みがない方もいることでしょう。主な業務は、悩みや不安など、心の問題を抱えた人やその家族などから相談を受け、その解決に向けてともに考える相談業務です。
また、相談を受けると聞いても、私がどのような相談を受けてきたのかイメージしにくいことでしょう。
例えば、「就労したいが、なかなか行動に移せず悩んでいる」というご本人からの相談、「子どもが学校に行かず不安」という保護者からの相談、「父親の様子がおかしい、病院に連れていきたいが本人が応じない」という家族からの相談などです。
挙げるときりがありませんが、それぞれの事例において、関係する方々とどのように解決に向かっていくかについて、ともに探ってきました。
私がこの職に就いた当初は、一般的にあまり馴染みのない職業でしたが、最近では、病院や学校など活躍の場が増しています。私は幸いなことに、異動のある地方公務員という立場でしたので、県立病院、児童相談所、保健所などに勤務する傍ら、児童自立支援施設の兼務や、県立看護学校の非常勤講師を務めることができました。
そのため、医療、福祉、精神保健、教育といった多岐にわたる分野でこの業務を経験しました。
そんな私も経験のない若い頃は、相談を受けるノウハウがわからず、暇を見ては書店に足を運び、参考になりそうな本を読みあさる日々を過ごしました。しかし、手に取った本は、専門的すぎて難解であったり、読み取れても実際どのように現場で活用したら良いのかわからなかったりしました。
もっと具体的な例を交えて、わかりやすい表現で書かれた本に出会いたかったのですが、残念ながら叶いませんでした。
現在は、その頃に比べると手に取ってみたくなる本が増えましたし、ネット検索という手段もありますので、求めている情報に行きつきやすくはなっています。それでも、当初私が欲しいとイメージしていた本には、残念ながらまだ出会えていません。