家族との団欒に飢えていた自身が、仁に安穏の期待を抱いていたことが正直な気持ちだった。その望みは叶うことなく大連の寒風に乗って霧散していった。どんなことでも相談できる唯一の人が仁だった。全てを受け止めてくれると思える人だった。
もう、自分には誰もいない。一人で生きていくしかない。
現実に凍える思いとなったが、一人で生きていくしかない。
もっと力を付けて、現実世界にしがみ付いて、一人で生きていくしかない。
誰に頼ることなく自身の力で、一人で生きていくしかない。
一人で生きて、一人で成功し、周りの全ての人達を見返してやる。
極寒で破裂した水道管の周りにできる氷塊のように復讐の決意は固く一生溶けることなく心の中に冷たく綺麗に黒々と固まっていった。翌日には、今まで、漠然と行っていたことを仕事に対する責任とその自覚で邁進するようになった。時代は、丽萍(リーピン)を受け入れ、結果は自ずと付いてきた。
中国共産主義青年団……中国共産党による指導のもと若手エリート団員を擁する青年組織
上山下郷運動……文化大革命期、青少年の地方での徴農を進める運動
知青……知識青年の略称、文革時に農村部へ派遣された青年たちの呼称。一般的に高等教育を受けたインテリの青年たちを指す
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