ただでさえギリギリの人数しかいないのに、本当に開催できるのか。最後まで不安を抱きながらの開幕となったが、本番の会場、運営スケジュールで行うテスト大会も含めた6大会の派遣、訓練を経て確定した24名が武器検査を担当、少しでも無理のないスケジュールをと考慮し、2グループに分けたシフトを組んだ。
「とにかくコロナ対策には気を配りました。もし1人でも陽性者が出れば、他のスタッフも濃厚接触者になってしまう。24名のメンバーに補欠はいませんでしたし、器具を扱う以上物を通して接触感染があるかもしれない。
消毒、検査を徹底して感染対策に努めましたが、何か起きたらどうすればええんや、というのは常に頭の中にあり続けました」
徹底した対策の甲斐あって、開幕から競技最終日まで1人の陽性者も出ることなく終了した時、心底ホッとした、張西はそう言う。
本来ならば必要ないはずであったコロナ対策に気を配り、神経を注ぎながらもSEMI委員として東京五輪では新たな試みも為された。コールルームでのフルーレのメタルジャケットのチェック方法を変えたことだ。
選手はユニフォームの上にメタルジャケットを着用しているから、剣を突けば剣先のセンサーが反応する。当然のことなのだが、中にはメタルジャケットの範囲を少しでも狭めれば突かれるポイントが減る、とばかりに試合では小さめのメタルジャケットを着用したり、えぐったりしてより範囲を狭めようとする選手も出てきた。
その対応策として、東京五輪では武器検査の際には持参するだけのメタルジャケットを、コールルームでは実際に着用した状態でジャッジした。
「ほとんどの選手はルール通りですが、ごくまれにそういう選手も出てくる。ならば我々も徹底しよう、と。東京、日本で開催されればここまできちっとやるのか、と世界に向けて発信することにもつながったはずです」
まさに〝怒涛〟のごとく過ぎた2021年、東京五輪の夏。
SEMI委員としての責務を果たす一方、張西は男子エペ団体の金メダルも、ピストと同じ目線からその瞬間を見守り、喜びを分かち合った。
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