僕は全く傷ついていないように続けて笑った。

「なんというか、まあ、ご愁傷さまというか」

藤堂刑事は目を伏せてごにょごにょと言葉尻を濁す。

「僕らはなんだかんだ言って相思相愛なんですよ。宮園は嫌よ嫌よも好きのうちで、僕のことを知っているんです。今日の朝だって僕の気を引くために多分、逃げたんでしょうね」

腕をヌルっと顔の前で組んでそこに頬をつけた。視線は物憂げに机の角に向けた。藤堂刑事は僕の横顔をじっと見つめているのを感じる。多分引いている。間違いなく僕の言動を理解できなくて、僕を怪物を見るような、奇異へ向ける目をしているだろう。

「僕は宮園と同じバスに乗っていましたから、宮園は追いかけてほしくて、そうしたんだと思います」

「それなら、遅刻じゃなくても便を一本早めに行けばいいだろう?」

僕らがいつも乗る便は、学校に遅刻ギリギリに到着するバスの二本前になる。僕らの便の次はギリギリのスリルを回避したい生徒が多く、窮屈で嫌厭 (けんえん)している。

ちなみに遅刻ギリギリの便は教室に駆け込まなければ間に合わない。その割に一般の乗客も多い。ただ、僕らの使う便より早いものは、途端に乗客が少なくなる。ここで僕と一緒になってしまえば、逃げようがない。学校に着いても人はまばらだった。

 

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