【前回の記事を読む】「どんなにイヤなことがあっても我慢するんだよ。もし、悲しくなったり辛くなったら…」15歳、実家を離れて就職する私に母は…

お豆腐ください

奥さんは、あごに手を当ててうーんと考えながら

「それじゃあ、お豆腐作りの説明を簡単にしますね」

奥さんは工場の中をゆっくり歩きながら教えてくれる。

「まず最初に大豆をお水に一晩つけておきます。冬は寒いから長い時間つけておくの。夏は反対に短め。それで次の日にしっかり水を切ってから機械ですり潰すのね。まずここまでの作業がすごく大事なのよ」なるほど。なんとなくわかる。

「それからすりつぶしたものを大きなお鍋でゆっくりと炊き上げます。その炊いたものを機械でギュッと絞る。ここで、『豆乳』と『おから』に分かれます」

秋田でもおからはよく食べていた。

「それから豆乳にニガリを入れます。これで豆腐が固まり始めるの。ここまでは、どんな豆腐も一緒だからね」

ふむふむ。これが基本の形だ。

「それを型に入れてしばらく置いておきます。最後にこの大きな豆腐の塊を一丁ずつ切り分けて、大きな水槽に豆腐を入れて水にさらすの。これが『絹ごし豆腐』。塊のままの状態でおたまですくっておいたものが『くみあげ豆腐』。一旦、豆乳にニガリを入れて固まりかけたものをくずして木綿布をかけて押し固めたものが『木綿豆腐』ね。だから絹ごし豆腐よりも固い豆腐になるの」

絹ごし豆腐と木綿豆腐の違いは、ここなんだ。

「その木綿豆腐を水につける前に表面に焼き目をつけると『焼き豆腐』になります」

奥さんは手短に説明するけれど、覚えるのが大変。ただ大豆を固めただけだと思っていたし、種類がこんなにたくさんあるとは思わなかった。他にも『厚揚げ』、『油揚げ』、『がんもどき』もある。私にできるだろうかと、少し心配になってきた。