やはりスーパーを狙おう。スーパーは、固定客相手で生活必需品を扱う。コンビニのように激しい商品展開はない。しかもファミレスやコンビニのように24時間営業ではない。夜勤がない。「これだ!」定年までの僕の居場所はスーパーだ。長い思索の末に悟りを得た僕は就活のエネルギーをスーパーマーケットに全力で注ぎ込みました。
その結果某大手総合スーパーの内定を勝ち取りました。しかも幹部候補生の枠で。天にも昇る気分でした。僕の心の世界にはすでに妻と肩を並べてタイのビーチで夕日を眺めている65才の僕が存在していました。
が、2年後僕はスーパーを退社していました。入社してすぐにうつ病になってしまっていたのです。その後約20年間僕は東京の底辺を流転しながら生きてきました。日本は確かに不況になりました。が、そんなに餓死者はいません。スラムのような場所もそんなにありません。家族や子供を持っている友人も多数います。
東京では五輪も行われました。僕が大学生だった時に日本の破滅を叫んでいた人々はいったい何処に行ったんでしょう。
ちなみに僕の先行逃げ切り人生の母体になるはずだった某大手総合スーパーは店舗の約半数を閉鎖することを決定し、大リストラを決行しました。不動産業界で働く知人はかつて大手不動産会社でリストラを経験しました。
リストラが始まると社員の人生は、去るも地獄、残るも地獄状態になるらしいです。僕の定年までの方舟になるはずだった会社の内部も今そういう状態でしょう。
ちなみに彼のいた不動産会社が傾いたキッカケは手抜き工事の発覚です。無論営業担当の彼にはなんの責任もありません。
僕の方舟は、利益を稼ぐ繊維部門の衰退が原因です。
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