「ようちゃん、おやまのトンネルてつだって」

くみちゃんの向かい側に座ってトンネルを掘り出す。そこへお母さんが走ってきた。

「ごめーん、見ててくれてありがとう」

「いいよいいよ、今来たところだから。今日も預かろうか?」

「毎日本当にごめんね」

「気にしないで。珠ちゃんも帰ってくるの見てるよ。病院通いも大変だよね。ちゃんと寝れてる?」

「うーん……」

聞こえてくる大人の話は難しい。昨日も同じことを話していた。お話する時も笑っていないことが多いし。僕は砂の中を彷徨うくみちゃんの手を探して手を伸ばした。砂が崩れる。ここだと思って更に手を伸ばすとくみちゃんの指に触れる。思わず体を起こして二人で笑い合う。大人もこうやって遊べばいいのに。そしたらすぐにえへへって笑えるのに。

「洋ちゃん、今日もくみちゃんのお家で夜ご飯食べてね。お母さん、しおちゃんのとこ行ってくるからね」

全身砂まみれの僕は身体を揺らしながらお母さんを見上げた。

「またびょーいん?」

「うん」

「ぼくもいっていい?」

「ごめんね、洋ちゃんは入れないんだ」

知っている答え。いっつも言われることは一緒なのについ聞いてしまう。いつも保育園から帰ってきてすぐにお別れ。しおちゃんが生まれてからお母さんはずーっと病院にいる。帰ってくるのは僕たちが寝てから。お父さんと交代してるって聞いた。お父さんとはずーっと遊んだ覚えがない。