俳句・短歌 短歌 自由律 2020.08.22 句集「曼珠沙華」より三句 句集 曼珠沙華 【第4回】 中津 篤明 「冬花火 亡び 行くもの 美しく」 儚く妖しくきらめく生と死、その刹那を自由律で詠う。 みずみずしさと退廃をあわせ持つ、自由律で生み出される188句。 86歳の著者が人生の集大成として編んだ渾身の俳句集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 ああ 朧 だれか口吸え 処刑台 禁欲の 一球体 の 一微笑 充分に 交わる 冬の 好奇心
小説 『アイアムハウス』 【新連載】 由野 寿和 静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた 午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…
小説 『SHINJUKU DELETE』 【第9回】 華嶌 華 親の後の風呂に抵抗があった。親の裸も見たくなかった。「家族だから大丈夫なのが当たり前」? 他人のほうがマシだった。 化粧なんかしなくても、どうしてこうも美しいのだ。自分の可愛さを理解している。そして、可愛いことを、正義とも罪とも思わない純朴さがある。喜美子は、いたたまれない気持ちになって、さっとリビングを出て自室に戻り、着替えを片手にバスルームへ向かった。これからは電動歯ブラシのスタンドを見れば少女を思い出す。彼女が咥える歯ブラシには、喜美子の唾液の微粒子が付着している。申し訳ない気持ちがたたり、喜美子は翌朝…