3-2:コケコッコー!


小学校四年生になると、学校で委員会というものに加入しないといけない。これはクラスの委員ではなく学校全体の委員で、わたしはずっと放送委員とか図書委員にあこがれていた。

この頃から人前で話したりすること、そして人に何かを伝える、教えるということをとても快く感じていた。

わたしの学校はその市で最も古く歴史のある学校で、かつ最も大きな小学校だった。学年は百六十人以上いてクラスはその年によってよく変わったが、四、五クラスあった。

たくさんある委員会の中で、用紙に第一希望から第五希望までを書くように言われみんなで一斉に書いた。先生は、必ずこの第五希望までには入るようにすると強くおっしゃっていたので、それを信じて第五希望まで書いた。

当然のことながら、放送、図書、体育などを書き、あとは緑化とか美化とかなんだか適当に選んで書いた気がする。

勝手に「どうせ、第三希望くらいまでにうまくおさまるだろう」と高をくくっていたのだ。

さぁ、確定した一つに赤い丸がついた用紙が一枚ずつみんなのもとに返されていく。

待てど暮らせどわたしの番がこない。いったいどうなっているんだろう。そしてなんとクラスでいっちばん最後にわたしの名前が呼ばれ用紙を受け取った瞬間、本当に目が点になった。

そこには、赤で6という文字が先生の字で付け足され、その下には飼育委員会と書かれていたのだ。なんだかキツネにつままれたような気持ちになった。第五希望までに必ず確定するのではなかったのか。

先生の顔を見ると先生はとても申し訳なさそうに、でも笑顔で、

「あなたならなんでもできると思うので、第六希望になっちゃったけど、頑張ってね」

いやいや、第六希望も何も希望していないよ、勝手に書き足されたのに。なんだか鳩が豆鉄砲を食ったかのようにしばし呆然とそこに立ち尽くしてしまった。

でもこんなことでへこたれないぞ。こういうことがあるたびに、置かれた状況下で最大限のパフォーマンスを発揮してやると逆に燃えるタイプだった。

先生もそれを知っていてうまくわたしを利用していたのかもしれない。でも、こうしてわたしは日に日に精神的に強くなっていったように思う。

正直なところ、わたしは動物がどちらかというと苦手なほうだと思う。犬や猫を見て逃げ回るようなことはないが、自分から近づいて行って抱っこしたいとは一度も思ったことがない。

だからそんな自分がまさか飼育委員になるなんて。信じられなかった。なんとかその事実を受け入れて、飼育委員会初日に出席した。飼育委員会なんて興味も一切ないものだから、学校にいったいどんな生き物が飼われているかもきちんと把握していなかった。

 

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