深海のダイヤ

上目遣いに尋ねたら、伸親の頰はますます赤くなった。

「なんでそう思うんだい?」

「あの若いお巡りさん、なんだか疑っているように見えたから」

「あぁ、優真は刑事志望でさ、交番時代に事件に立ち会って解決に貢献したら刑事課に行けるって、張り切ってるんだ」

「そうなの? でもなにか事件かもって思わせるようなことがあったんじゃない?」

「ないない。俺も万が一を考えてパトロールがてら聞き込みをしてるだけで、飛熊署からは捜索の指示すら出てないから」

「そっか。伸親さん優しいね」

「そうかな? 照れるな」

にっこり笑う雪子に、伸親はへらへらしている。

「そういえば雪ちゃん、腕の火傷は大丈夫?」

「ええ、痕は残らないと思う」

鈍くて呑気な夫は、田所とのトラブルでできた雪子の怪我を、料理中にできた火傷だと信じて疑わない。

もし、この傷のお礼に田所を殺したのだと告白したら、伸親はどんな顔をするだろう。