第4章 孤立死の発生が止まらない
お買い得? 事故物件
不動産会社のAさんは部屋の中で自殺した方の遺族からその部屋の売却を依頼された。自殺した本人は衝動的な自殺だったのか、家の中は生活していたときの状況そのままであった。
キッチンには洗い物があり、リビングのソファには脱ぎ捨てた衣類があり、まるで誰かがまだそこに生活しているようであった。
売却の依頼をした遺族は、遠縁であるからか、マンションを見に来ることもなかった。当然、家財道具を片付けたり、処分したりすることもない。「家財道具の処分も含めて、全部そのまま売却したい」とのこと。市場価格よりかなり割安での売却依頼であった。
Aさんは早速、売却に向けた営業活動を開始した。割安なせいもあり、購入を検討したいという人からの反響はそこそこある。
しかし、そのマンションは誰を案内しても「ここに住んでいる方はどうしたのですか」と聞かれてしまう。月日が過ぎると室内には一種異様な雰囲気が漂うようになり、それから相当な期間が経過しても、購入したいという人は現れなかった。
依頼主にこのままでは売却は厳しいことを伝えたものの「自分がこれ以上、何かしなくてはならないなら売却を諦めます」と断られてしまった。
その後も同じ状況が続き、とうとうAさんは売却活動を諦めた。
買い手の付かないこのマンションは、こうした不動産を専門に扱うプロの不動産会社が爆安で購入することとなった。