真夜中の精霊たち
もしもグレートスピリットが与えてくれるものが自分にとって都合のよくないものだったとしても、一時的には苦痛を伴っても、それが大いなる意志であるなら、未来を信じられたのさ。部族の者は皆そうだったけれど、なかでも彼は特に明日を信じる能力に長けていたんだね。
だから本当は、未来の彼自身が彼の前に現れたとしても、それほど驚くべきことではなかったんだよ。
彼はその後、チーフとメディスンマンと叔父がいる、ひと際大きくて立派なティーピーに呼ばれた。部族の全員がその場に集まった。そこで彼が見たことをもう一度、みんなに話すことになったのだ。
彼は見せられたビジョンに対して自分なりの感想を述べて話を締めくくった。私はお前だと言ったその人に、今の自分では想像もできない静けさがあったこと。そして、きっと自分は今のチーフや叔父と同じ年までは生きられないだろうと悟ったこと。
それでも、最後には満たされていると言ってもいいほど、心は逸(そ)れることなくひとところにいられるだろうと、なんとなくそう思えたことなど。
彼が話し終える頃、その場は静まり返っていた。誰も何も話さなかった。しばらくはみんな自分の中にある宇宙を見つめていて、そこから過去を臨み、そしてまた未来から現在に流れてくる、細く微かな流線を自分のほうに手繰り寄せて、それを丁寧に撫でながら、無言のうちに語らうのだった。
この頃、彼らネイティブアメリカンを取り巻く環境は既に逼迫しており、未来は閉ざされつつあった。誰もが予感し、彼も当然、自分達を取り巻く雲行きが年を経るごとに怪しくなっていることを承知していた。
見えないほど細く微かな流線は、あまりに苦しみの多い未来から放たれているにも関わらず、なぜ、こんなにも光り輝いているのだろう。苦しみの多い未来のその先には、一体何があるのだろうかと、彼は考えた。