迫りくる未来を語った青年は、その日から「ドゥモ(宿命)」と呼ばれるようになった。ドゥモが成人してからの数年間は、彼にとって忘れ難い歳月になったようだ。
多少の危機に見舞われながらも、チーフの的確な判断のおかげで、彼らがティーピーを張る場所はいつも安全だった。
ねえ、テントウ虫ちゃん。君は恋をしたことがある?
僕たちのドゥモはね。その頃、そりゃあ猛烈に恋をしていたんだよ。だけどまだ狩や戦闘でめぼしい手柄も立てていないうちから妻を欲しがるなんて、部族にとっても彼にとってもけしからんってわけさ。
ドゥモはそれでも、何とかして彼女と二人きりになりたかった。二人きりになってどうするのかと尋ねられても、どうしたらいいのか見当もつかなかったし、自然な運びで会話ができるかどうかさえ怪しかったけれど、それでもやっぱり、二人きりになりたかったんだよ。
チーフの娘でブライト・アイって娘(こ)がいてね。その娘は部族一の美人で名が通っていたんだ。ドゥモが恋に落ちたのは、そのブライト・アイと見えないところで離れがたく結びついているみたいに、常に行動を共にしていた親友のハミングアローだ。
彼女は親友のようにいろんなところからお誘いのかかる娘ではなかったけれど、とてもまっすぐに人や情景を見つめられる人だった。
あまりにも目を逸らさないでいるものだから、正直に生きられなかった人にとってその視線はまるで脅迫だったけれども、正直さを求めてやまないブライト・アイや、その他一部の人間にとっては何にも代えがたい祝福になった。
二人だけになる計画を、彼はざっと二百くらい立てた。だがどれも上手くいかなかった。いつもいつも彼女の傍には彼女の母か祖母か、そうでなければブライト・アイがいて、彼の計画を片っ端からこん棒で打ち砕いてゆくので、彼はこの三人を心底恨んでいた。
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