日本で仕事の合間に学んだため、文章を読んだり書いたりするまでにはほど遠いものでしたが、国家試験はマルバツ式なのでどうにか理解できました。本当に頑張りました。

国家試験場で私は一番後ろの席でした。試験が始まり、私が半分ほど終わっただけなのにポツポツ退出する受験者がいました。私はまだ半分残っています。頑張ってやっと終わりました。ちょうどその時、終了のチャイムが鳴りました。本当にホッとしました。

そうして合格の知らせが来たので、保健社会部で免許証をいただき、前に紹介されたD病院を訪ね面接に伺ったのです。院長先生は丁寧に対応してくれました。

私は、韓国社会の市場とか喫茶店とかで見た人々の貧しさがゆえの互いの人に対する尊厳を欠いた状況に、心を痛めていました。ここの院長の対応は大変紳士的でした。

そうして面接が始まります。

「ところであなたは今日本で永住権を持っているのですか?」

私は、「はいそうです」と答えました。

すると、「ここの病院は半官半民の病院なのでその永住権があると困るのです。永住権を日本に返してこちらに来てください」と言うのです。私はびっくりしました。

まさかそんなことがあるとは想像していませんでした。彼は面接の前に、この病院には就職希望の方が百人いて、あなたはその一番上なのですと言っていました。

私から永住権を取ってしまったら、私は日本に帰れません。親も兄弟もまだ日本にいるのですから、私が永住権を破棄することは無理です。それでしたら私の代わりにほかの方に就職をさせてください、とはっきり言って病院を後にしました。

私の気持ちは複雑でした。なぜ最初に永住権について触れなかったのか? 結局は騙されたのか?と思いましたが、もう私の気持ちは決まっていました。

そうだ、やっぱり日本に帰ろう。私は日本で一生懸命働こう、そうして勉強しようと、心を決めました。そうして、できれば国立公衆衛生院で一年間勉強したい、と思ったのです。私はその時二十八歳でした。