オキテ2 分譲マンションに大家さんはいない
台風で自転車置場の屋根が壊れて自転車が停められないとしよう。賃貸マンションなら居住者が大家さんに電話をすれば、大家さんが自転車置場の屋根を修理し、代わりの区画を手配してくれるだろう。分譲マンションは、そうはいかない。
「え? 管理会社が全部やってくれるんじゃないの?」と思う人もいるだろう。管理会社は居住者から電話を受けると、それを理事長に伝える。理事長は所有者を集めてどうするかを決める。お金は所有者から集めた管理費や積立金から払う。なんでもやってくれる大家さんはいない。
賃貸と分譲の区別がついていない所有者にありがちなのが「管理会社の○○の対応が気に入らない、だから管理費を払わない!」というクレームだ。
自転車置場の例を続けると、壊れた屋根の修理の手配が遅い、代わりの区画では自転車が停めにくいから不満だ、だから管理費を払わない、となる。
ご本人はお金を払わないことによって管理会社をこらしめているつもりなのだろうが、実は、管理会社はちっとも困らないのである。困るのは管理組合だ。
管理費は直接、管理会社に支払われるわけではない。いったん、所有者全員の管理費を銀行口座にプールして、その中から、必要経費として電気代や水道代、管理会社に支払う委託費などを支払う。支払いを拒否する人がいれば、今までプールされた管理費の剰余金などから資金を充当して支払うことになる。
剰余金がなくなれば、全員の管理費を値上げするなどの対応が必要になる。管理費を払わないとしている人の分だけが、減額されて管理会社に支払われるわけではない。
所有者のひとりが払わなくても、管理会社の売上げは減らないのである。
こうしたしくみを知らないと、思わぬところで管理組合に迷惑をかけることになる。
オキテ3 1階に住んでいてもエレベーターの点検費用を払う
「私は1階に住んでいるからエレベーターを使わない。その分の管理費は安くならないのか」
これはマンション管理に関する古典的な質問だ。いろいろな入門書にも必ずといっていいほど出てくるが、あえて紹介しよう。
部屋ごとに利用頻度に応じて管理費の金額を変える、そんなことを言い出したら、最上階の人だけが屋上防水の修繕費を負担するとか、2階の人は1階から2階の階段まで、3階の人は1階から3階の階段まで......の費用を負担するなど複雑さを極めてしまう。使うか、使わないのかで管理費や積立金の費用は区分されていない。
管理費や積立金は、マンションという建物を均等に分割して、それを全員で負担するという考え方だ。ほとんどのマンションでこの考え方が採用されている。
これとは反対に、機械式駐車場は使用者の使用料だけでその修繕費用を賄うようにしようという考え方が主流だ。
【前回記事を読む】共用部分という盲点:マンションを購入しても、部屋の中にあるものは全て自分のものだとは限らない?
次回更新は1月17日(金)、8時の予定です。
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