第一章 あなたの知らないマンションの世界

マンション特有のコトバ

【賃借人、占有者、居住者】

全部同じじゃないかと思う人もいるかもしれない。ところがそれぞれ、ちょっと違う。 まず、マンションの所有者がその部屋に自分で住むことなく、他人に部屋を貸す場合、部屋を借りている人を「賃借人」という。

詳しく言うと、賃借人は、所有者との賃貸借契約を締結して家賃を支払って合法的に住んでいる人を指す。家賃の支払いがあるという点がポイントだ。

「占有者」というのは、所有者と同居する家族など、所有者に家賃を払わずに住んでいる人も含まれる。

さらには、合法的に住んでいる人に限らず、不法占拠している人も含んでいる。空き家の鍵をこじ開けて、勝手に住み始めた人がいたら、その人は占有者だ。そんな奴は名なしのゴンベエでよく、名前を付ける必要もないと思うが、マンション管理の世界では、占有者という呼称が付いている。賃借人より占有者の方が広い範囲の人を含む言葉である。

また、「居住者」というのは、法律などではあまり使用されていない「ふわっとした」言葉だ。むしろ、居住者には、契約関係がどうであれ、平和に住んでいる人という文学的な響きもあるように感じる。もちろん、マンションを所有し、かつ居住している人も「居住者」のひとりだ。

本書では、特に厳密な区別をする必要がない限り、住んでいる人を「居住者」と呼ぶ。