アルコール依存
母との絶縁以降、気づくと毎日お酒を飲むようになった。
初めは夜ショート缶(350ミリリットル)のビールを一本飲むだけで、お酒を楽しむという範囲の飲酒量だったが、母とのことがずっとモヤモヤとしていた。
少しずつ飲酒量が増えていき、酔っ払うまで飲まないと紛れない、酔っている間はフワフワとして面倒なことを考えず悩まずに済み、気持ちが沈みがちのときでも息子にも機嫌よく接することができるなど、気づかぬうちに昼夜問わずの飲酒が当たり前になっていった。
一樹に注意され指摘されても、記憶が飛ぶわけでもなく、飲酒運転をするわけでもなく、誰にも迷惑はかけていないと勝手に思い込み、あまり耳を貸さなかった。
しかし、飲んではいけない時にお酒を制御できなくなっていき、飲み過ぎて嘔吐するようになり、そこでようやく酒に依存していると自覚し、お酒に頼る生活をやめた。
医師によると、一般的な〈お酒を楽しむ〉と〈アルコール依存〉のボーダーラインは、飲んではいけないという場面で制御できるかどうか。
もちろんこれは入り口に過ぎず、依存がひどくなっていけば、記憶障害や幻聴幻覚など重い症状へと繋がっていく。
アルコールに逃げた結果こうなってしまい深く反省し一樹に謝った。
一樹は私を責めたり怒ることはなく「薫の気持ちも、そうなるのも分かるけど、何か取り返しのつかないことが起きてしまう前に気づいてくれて本当に良かった」とだけ言った。
いっそ、こんな私を責めたて罵倒してくれた方が楽だったのに、その言葉だけだったことが逆に一樹のいろんな気持ちの重みを感じ、自分の心に深く刺さった。
そうして、私はアルコールに頼る生活を絶つことができ、いろんな葛藤を抱えながらも家族の時間を改めて大切にしようと思った。
そんな中でも、凪人も成長していき気づくと4歳になっていた。