「こちら通行止めでーす。あちらの入口からどうぞー」
その場に立ち尽くす僕を見て、周りのヤツらが、女がケタケタ笑っている。
「おい、通してやれよ。こいつ泣いちゃうよー」
「かわいそうー」
口々にそんなこと言いながら、僕の、今の現状や事情など何も知らずに、ただ自分らが楽しくなるためだけに僕をバカにする。
就活も逃し、大学生活を賭けたリベンジもできず、挙句にこんなヤツらにまでバカにされている。自分が置かれているこの哀れな状況にハッキリと気がついたとき、僕は頭が真っ白になった。
バンッ!!
気がつくと、僕はそいつのあげた足を思いっきり踏んでいた。
静まりかえる店内。呆然とするパチモンエグザイル達。
「いてーな、てめえ!!」
パチモンリーダーは立ち上がると、注文していたビールジョッキを持ち、バシャと僕にかけてきた。
僕の顔にビールがかかった瞬間、僕の目の前は真っ白から真っ赤になった。これは伝わんないかもしれないし、僕だけかもしれない。
でも確かにあのとき、白の次は赤だったのだ。怒りの沸点を超えて、なにかの血管が千切れたのか、本当に目の前が真っ赤になったのだ。そしてその瞬間、僕の頭の中では今までのことが全てよぎった。
金髪坊主にボコボコにされて漏れた「助けて」。
隆志に言われた「ダサい」。
キツネ目オヤジのウィッシュポーズと電話での「淫行野郎」。
それだけじゃない。全部。全部が蘇った。
北九州でシンナーを売ってきたヤンキーも。
アリエルのボールペンをヤンキーにあげていた美穂ちゃんも。
僕の童貞を奪ってサーファーの男にすぐ乗り換えた亜里沙も
怒り、怒りだった。真っ赤な怒り。
僕はもう何も考えられなかった。大学のこともこれからの未来のことも。僕の中にあるのはただ一つ。ただ一つの思い。
許せない。
【前回の記事を読む】「もう一回、リベンジさせろよ」3年越しにとうとうこの時が来た。威勢よくケンカを吹っ掛けるも、彼の眼中に僕はおらず......
次回更新は1月16日(木)、18時の予定です。
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