序章 新たな預言

英良の章(一)  振出し

エリーナの声が遠くなる。身体が不安定に浮いているようだ。

心臓の鼓動が聞こえ頭痛がしてくる。脳へと繋がる動脈に血が流れ鼓動が脳天を貫いていく。起きているのか眠っているのか分からない。そんな状態で英良はまた別の夢に落ちていく。以前も見た、エボシの夢だ。

「英良様。これから現れる幼子に対しては時間を惜しむことなく言霊を掛けていただきたいので御座います。私も宇迦之御魂神の使いとして英良様にお会いできましたが、長い時間人界にいることができません。この場を離れる時が刻一刻と迫ってきています。もう一刻ほどで私の身体は英良様の肉眼では捉えることができなくなるでしょう。

今一度申し上げます。力の開眼をお急ぎ下さい。そして、多くの言霊を幼子に掛けて下さい。時間を惜しむことなく怠惰に流されることなく、幼子をお助け下さい英良様」夢の中でエボシの夢を見た。相変わらず行司の容姿だった。

「英良様が持ちたる力は、他者を救うかまたは葬る力に御座います。しかしながら自らへ行使することはかないません。英良様も過去に経験があるかと思いますが、言葉で他者を助けることを施行する力のこと。された覚えはありませんか?」と言われた英良は心臓の鼓動がひときわ強くなり目が覚めた。時計の針を見ると午前三時。眼が冴えていたがほどなく深い眠りに就いた。 

「お兄ちゃん。くるしいの、たすけて。お兄ちゃん。最近、毎日血が出るの。すごく頭も痛いよ。お兄ちゃん、ぼくおかしいのかな? いなくなっちゃうのかな?」かけるの声が聞こえた。