「正家の下に囲い込まれている甲賀衆を何とかここから脱出させたいのでござるが、いかがでござろうか?」
太一の申し出に、与一は難しい顔をした。
「正家は甲賀から五十名ほど甲賀衆を自分の配下とすべく連れてきた。その大半は、正家に従うのは本意ではないから連れていけようが、困ったことがある」
「それは、いかがなことでござろうか?」
「実はここ水口城には連れられてきていない甲賀衆のその妻子が、人質としてここに連れてこられている」
「人質でござるか? ……しからば、ほかの甲賀衆に伏見城に行かせぬようにしようというのでござろうか?」
「まあ、普通はさように考えられるが……」
与一は言葉を濁し、何か良くないほかの目的があるかもしれないと懸念しているようだ。
「甲賀衆は一応配下として扱われていて、閉じ込められているわけではないから、脱出させられると思うが、妻子のほうは、家康様側の甲賀衆の家族だともいえようから、厳しく監視されていて無理だと思う」
「さようでござるか。では、甲賀衆だけでもできるだけ多く脱出させたい」
「うむ。わかった」
二人は、甲賀衆が寝ている部屋へと向かった。
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