邂逅
先読の使徒
「そうです使命です」
「どんな使命ですか?」
「いいですか、この先、現世は近い将来、破滅するほどの危機を迎えるでしょう」危機、と英良は繰り返す。
「そう……既にその予兆は起き始めています。大地が悲鳴を上げ、風が救いの声を上げています……自然が助けを求めているのです。しかし、人間は私利私欲に溺れ、そのような自然の声に耳を傾けようとはせず、この星を蝕んでいます。
このままではこの星……地球の地軸は傾き、結果破滅の道を進むでしょう。その序章として近い将来、多くの人が大きな黒い闇に飲み込まれ、多数の命が消えていく……現に私はそのビジョンを捉えました ……。貴方は、自分の持てる光の力を放つのです! 力の開眼を急ぎなさい」ジェシカは言う。
力の開眼……、と英良は呟く。
「そうです。今、この時、同じ人間界で、貴方と同じ光の色を持った女性がいます。近々その女性に、私が仕える神が降り立つでしょう。その女性に会い、そしてその女性に貴方の子を宿すのです。生まれ出た子は、いずれ救世主となりこの星を救うでしょう。突然言われて、さぞかし混乱していることでしょう。しかし、よくお聞きなさい」
「さっきから言っている光とは何ですか?」英良は以前広目天から言われた光のことも思い出し尋ねる。
「そうでしたね。最初に光について説明しましょう。……私が貴方を見つけたのは、光が集まるところの場所、つまり光の集合体の中に貴方を発見したのです。人間界には貴方と同じ光を持った仲間達がいます。その者達は、貴方に光を使って交信してくるでしょう。知っていますね?」
知らない、と英良は言う。「はっきり言えることは、現代のテクノロジーでは、決して解明できない光力で貴方と繋がりを持つということです。良いですか英良、座してお待ちなさい」ジェシカは続ける。
「もう一つ貴方に忠告しておかなければなりません。貴方は光の子です。これから先、貴方は一般の人の誘惑に乗ってはいけません。欲を出して一緒の行動を取ってはいけません。欲は自分本意……自分だけが良ければ、それで良いことはありません。
自分が利益を占めると、誰かが苦しみます。理解できますね光の子よ。欲は大きく三つあります。分かりますか?」
分からない、と英良は答える。
「それは金欲であり、物欲であり、性欲です。どれかに心を奪われると、光の力は弱まります。気を付けなさい。困っている人を見殺しにすることだけはお止しなさい。分かりますね光の子よ……。
この後、多くの光の仲間が窮地に陥ることもあるでしょう。その時は、貴方の持てる光の力で救ってあげて下さい。それも貴方の使命です。誰も失ってはいけません。良いですね。それだけは忘れてはいけませんよ光の子」