第1章 闇の入口

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僕は元来た道を辿ってお前の部屋から出るとしっかりと鍵を閉めて帰路についた。そしてお前に電話する。

一回目。

二回目。

三日目。

四回目。

五回目からは直接電話番号にかけた。

六回目。

七回目。

八回目。

九回目。

十回目。

そうやって三十分間、持てる手段を全て使ってお前と連絡を取り続けた。共通の知り合いにお前と連絡がつかないから頼めるかと、頭も下げた。

『連絡取れないって? どうした? 何かあった? 家にもいないって? まじかよー。わかったよ、かけてみるよ』

『ええ、無断欠勤かぁ、あらまぁ。ごめんごめん嘘嘘。大変だね。連絡してみるわ』

『連絡つかない? ってもすぐそっち行ってやれないしな。まじかよ、切羽詰まってんな。わかったって。待ってろ』

『あら、久しぶりだねぇ。え、連絡取れない? あの子と? そう、そう。ごめんね、迷惑かけて。電話するからちょっと待ってて』

結局、僕はお前と繋がることは出来なかった。

仕方なくSNSで今日は僕のソロ放送になる事を告げ、それでもお前から連絡が来る事を待ち続けた。

 

ライブ放送は問題なく、右端のコメント欄が素早く上書きされていく。視聴者からの言葉は僕の目の上部を流れていったが、最初の数分間はお前の不在を心配する声だった。 

僕とお前が始めたVライバーとしてのゲーム実況は、最初の頃こそ一年位続けばいいと思っていた。社会に出て荒波に揉まれ、その中で憩いのホームがあれば心安らげた。それが今や登録者数十万人まで膨れ上がり、数字は徐々に伸びている。幼馴染と歩んできた道が認められているようで誇らしかった。