《小詩(シャオシ)、天国で楽しく健やかにいることを祈っています。あなたのことを忘れることができません。

あなたが、小さい頃、母亲(ムーチン)も父亲(フーチン)も仕事に忙しくて、私があなたの面倒を見ていました。毎日、何回も粉ミルクで母乳を作りました。

その粉ミルクが後に大きな問題になりました。あなたが飲んでいた粉ミルクは化学物質に汚染されていた製品でした。事件が分かった時には、もう柔らかいご飯を食べていて、粉ミルクは飲んでなかったと思います。私は何も知らなかったのです。

今考えれば、極端に安い豚肉を母亲(ムーチン)が、喜んで買ってきた時がありましたが、病気で死んだ豚かもしれません。野菜も水道水で洗っただけで食べていましたが、農薬が残ってたのかもしれません。近所の川で取れた小魚も食べていました。川の汚染も酷かったです。

仁は、一緒に食事をする時は必ず火が通っている物しか食べなかったし、川魚は食べなかった。屋台みたいなところにも絶対に行かなかった。私もそれで気を付けるようになりました。

小詩(シャオシ)がなぜ生きていけなかったのか、私の罪の大きさに慄いています。》

   

丽萍(リーピン)は、日曜日の夕刻に携帯番号に残されていた番号を見て、何十年も忘れていた宝物の在処(ありか)を思い出した二十五歳の自分がいるようで、不思議な感じだった。

直ぐに掛けなおすことができず、後日、間違い電話でないことを祈って、折り返しで電話を掛けた。直ぐに繋がると懐かしい声で下手な中国語が聞こえてきた。

優しく労(いた)わるような声で、今までの苦労を思いやり、頑張ったことを称賛してくれ、妹の死を悼んでくれた。涙が止めどなく溢れて、何をする為に、何に期待し電話しているのかを思い出すのに時間がかかった。ただ、一目会って、慰めてほしかった。

週末に大連へ来ることを確認し、会食の約束ができた。留学前の思い出が走馬灯のように蘇った。仁と楽しく食事をして、その後、中山広場横の最近できたコーヒーショップでゆっくりと話ができればと考えた。

戻れなくなりそうなので、ホテルの部屋には行かないと決めていた。今までと違って、楽しそうな声ではなかったことが気になったが、金曜日に会えることを楽しみに今週を生きていこうと思った。

   

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