会話
日常の会話、手話での会話で感じる壁についてである。
「どうも相手の言うことが分からない」。
この際にも壁があるように思う。何が原因だろうか。相手もこちらの話し方が理解できないのか、こちらが相手の話す内容が理解できないのか。
話し方は人それぞれである。早口、回りくどい、話す順番がよく分からない、すぐに別の話題に移ってしまって、ついていけない。これも壁と言えるだろう。
内容が分からないに関しては、いくつかに分類してもよさそうである。相手が正常、性格など支離滅裂な話をしてもすぐに異常とは言い難い。
しかし、病気である場合もある。脳の言語中枢からの伝達が何か狂っているのだろう。これは病気の部類である。正常な人なら、前述した養老孟司先生の『バカの壁』に書かれている。これ以上求めても理解できないからやめると言って壁を作る人である。
もう一つは言語中枢そのものの疾患である。いくつもの疾患に関係があるが、症状の中の言語障害は「失語症」と「構音障害」に大別される。
構音障害では、声が小さい・大きい、声が低い・高い、発言不明瞭、もつれる、ふがふが声、速度が遅い、リズムが不自然などで判断される。言語中枢異常以外の疾患でも、言葉が聞き取りにくいことがある。
例えば、ダウン症、発達障害などにも見られる。これらは、正常に近い人もいて明瞭な区別は難しいが、やはり壁の一つに加えてもよさそうである。
言語中枢は大脳のブローカ中枢にあるが、最近は少し広い範囲が考慮されている。失語症に似た失声症は、脳の異常は全くなく、ストレスなどが引きがねとなっており、回復しうるものである。
手話を学ぶ時、中途難聴者にはこの壁が特に強固である。覚えられないし、すぐ忘れる。微妙な手の表現で意味が違ってくる。相手方はこちらの手話表現が読み取れない、こちらが悪いのか、相手が未熟なのかも分からない。
「壁」の手話表現は、右手掌を横に向け、下から上に挙げることで表現する。壁を壊すには、努力しかない。
努力の手話表現は胸の前で左手掌に当てた右手人差し指の指先をねじりながら前に押し出す表現で示している。両方とも手のひらは壁を示しており、努力はそれをねじり押し出すという意味の表現である。
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